【町名の由来で巡る西宮】第1回：地名に秘められた歴史ロマン 〜「夙川」「香櫨園」「苦楽園」など名の由来を徹底解説〜
はじめに：町名から見える西宮の魅力
関西でも住みたい街ランキングの常連、西宮市。その人気の背景には、自然と都市が調和した住環境や、歴史ある街並み、教育環境の充実など様々な要因があります。
しかし、もう一つの魅力として注目したいのが「町名の由来」。
夙川（しゅくがわ）、香櫨園（こうろえん）、甲陽園（こうようえん）、苦楽園（くらくえん）など、美しい響きや
個性的な名前が多く存在します。
この記事では、西宮市の特徴的な町名をいくつか取り上げ、その由来を探りながら、街の過去と現在をつなぐ歴史の物語をひもといていきます。
1. 夙川（しゅくがわ）：古の宿場から花見の名所へ
語源と歴史
「夙川」という地名は、“宿（しゅく）”が転訛したとも言われています。江戸時代、阪神間を結ぶ西国街道の宿場町であった夙川は、旅人の休息の地として栄えていました。
また、「夙」は「朝早い」「速い」という意味もあり、清らかな水が早く流れる川のイメージから名付けられたという説もあります。
【春先の夙川】
今の夙川
春には約1,600本もの桜が咲き誇る夙川公園。川沿いの自然と調和した住宅街は、現在も西宮を代表する高級住宅地として人気です。
2. 香櫨園（こうろえん）：香木と櫨の園に込められた美意識
由来の美学
明治末期、阪神電鉄が開発した郊外の別荘地・高級住宅地が「香櫨園」。
この地に生い茂っていた**香木（こうぼく）や櫨（はぜ）**の木にちなみ、「香り高く、美しい庭園のような地」という意味を込めて名付けられました。
また、阪神間モダニズムの先駆けとも言える地であり、文化人や実業家の別荘が多く建てられたエリアでもあります。
【香櫨園のこいのぼり】
現在の姿
夙川河口に近い住宅街として、今も「阪神間モダニズム」の空気を残しています。海にも近く、教育環境にも恵まれている人気エリアです。
3. 苦楽園（くらくえん）：人生の“苦”と“楽”を味わう地？
町名の背景
昭和初期、現在の苦楽園口駅周辺を中心に開発が進められた際に名付けられた町名。
「人生には苦もあれば楽もある。それらを味わい尽くせる場所であってほしい」との願いを込めて、「苦楽園」とされたと伝えられています。
また、周辺は元々山林や農地で、開発には苦労も多く、その開拓精神を町名に表したという説もあります。
【苦楽園口駅】
高級住宅地としての地位
阪急甲陽線沿いに広がる苦楽園エリアは、六甲山系の自然を望む傾斜地に住宅が広がり、関西有数の高級住宅地となっています。おしゃれなカフェやベーカリーも多く、若い世代にも人気です。
4. 西田町・東町・与古道町：中世の村名がルーツ
西宮市には、中世から続く古い村名を引き継いだ町も多く存在します。
与古道町（よこみちちょう）
「与古道」は、もともと「横堂」と書かれ、神呪寺（かんのうじ）に関係する仏教由来の地名とも。町内には古墳などの史跡も残されており、古くからの信仰と文化が息づいています。
【西田公園】
西田町・東町
単純なようでいて、これらの地名は地域の中核をなす田畑が西側・東側にあったことを表しています。中世～近世にかけて農業が盛んだった西宮の素顔が垣間見えます。
5. 津門（つと）：港町の記憶をとどめる名前
「津」は港、「門」は出入り口を意味し、「津門」は港への出入り口という意味を持ちます。
これは、西宮が古くから港町として栄えていたことを示す地名でもあります。
【津門中央公園】
現在も「津門大塚町」など複数の地名に名残をとどめており、阪神・JR・阪急が交差する交通の要所にもなっています。
6. 今津（いまづ）：文字通り“新しい港”
「今津」は“いまの港”という意味。
古くから交通の要所であり、物資の集散地として発展した西宮の経済の中心の一つです。西宮神社の“えべっさん”と並ぶ商業の町でもありました。
【今津灯台】
今も「今津灯台」や「今津六角堂」など、町の歴史を感じさせるスポットが点在しています。
【今津六角堂】
まとめ：町名に宿る“物語”が、西宮の魅力を深める
町名はただの地理的記号ではなく、その土地が歩んできた歴史や、人々の願いや暮らしを映す「物語」です。
西宮市のように多彩な地名が集まる都市では、それぞれの町が独自のキャラクターとルーツを持っており、それを知ることは、地域をより深く愛する第一歩になります。
次回は、「甲子園」や「甲陽園」といった“甲”のつく地名の由来を掘り下げていきます。
どうぞお楽しみに！
