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甲子園、甲陽園、甲風園 地名の由来とは?

兵庫県西宮市は、大阪と神戸の間に位置する閑静な住宅地として知られています。特に「甲子園(こうしえん)」は、全国高等学校野球選手権大会の開催地として日本中にその名を知られていますが、実はこの「甲」の字を冠した地名は、西宮市内にいくつも存在しています。「甲陽園」「甲風園」などがその代表です。

なぜこのように「甲」のつく地名が多いのか?
今回はその由来や背景を、歴史的・地理的視点から掘り下げてみたいと思います。

「甲子園」の由来


全国に名を轟かせた地名の始まり
まずは一番有名な「甲子園」から。その名は全国高等学校野球大会の舞台である「阪神甲子園球場」で知られていますが、この球場がなぜ「甲子園」と名付けられたのか、ご存知でしょうか?

その答えは、1924年(大正13年)の干支にあります。この年は十干十二支の「甲子(きのえね)」の年で、特に「甲子」は60年に一度めぐってくる干支の始まりの年とされ、「物事の始まり」「縁起の良い年」として古来より吉祥とされてきました。

当時、朝日新聞社が中心となって全国中等学校野球大会(現在の全国高等学校野球選手権大会)のための新しい球場を建設し、その落成年がちょうどこの「甲子」の年にあたっていたことから、「甲子園球場」と命名されました。



地名化した理由
その後、この球場周辺の開発が進み、住宅地や商業地としても整備されていく中で、地元の町名やバス停、鉄道の駅名などに「甲子園」という名称が用いられるようになり、現在では正式な地名として定着しています。


「甲陽園」の由来


理想郷を夢見た郊外の楽園
続いては「甲陽園」。

阪急電鉄の「甲陽園駅」を中心とするこの地区は、西宮市の北部に位置し、六甲山系の自然に囲まれた閑静な高級住宅街として知られています。

「甲陽園」の開発は、大正時代にさかのぼります。1920年代、阪急電鉄(当時の箕面有馬電気軌道)が西宮北口から北へ延伸し、新しい路線を建設しました。これが現在の「阪急甲陽線」です。その終着駅である「甲陽園駅」の周辺に、阪急は住宅地と観光地を兼ねたリゾート型の郊外開発を行いました。

この時に名付けられたのが「甲陽園」です。

「甲陽」の意味
「甲陽」という名称は、いくつかの意味を含んでいます。

「甲子園」との連続性:すでに「甲子園」の名が知名度を高めていたため、それに続く形で「甲」の字を活かしたネーミングが考えられた。

「陽」=太陽・南向き・明るさの象徴:六甲山の南側に位置するこの土地は、日当たりが良く眺望も開けており、「陽」の字がぴったりだった。

「甲陽」=理想郷の響き:当時の広告やパンフレットでは、「甲陽園」は都会の喧騒から離れた、理想的な住宅地・避暑地として大々的に宣伝されました。

現在でも「甲陽園」は高級住宅街としてのブランドを保っており、落ち着いた雰囲気が人気を集めています。


「甲風園」の由来


風雅を感じさせる街づくり
西宮北口駅の北西側に位置する「甲風園(こうふうえん)」は、商業施設と住宅が融合したエリアで、阪急西宮北口駅からのアクセスの良さもあり、人気のあるエリアです。

この地名も、阪急電鉄が開発した際に付けられたものです。「甲風園」は「甲子園」「甲陽園」に続く形で名付けられたと考えられています。

「風園」の意味
「風」は「風雅」や「風光明媚」、「園」は「庭園」「楽園」を連想させる漢字です。「甲風園」はつまり、「甲の地(西宮)の風情ある園」という意味が込められています。

実際、阪急電鉄はこのエリアの開発において、街路樹や景観にも配慮し、風情ある郊外住宅地として整備を進めました。




「甲」の字がもたらしたブランド力


「甲子園」「甲陽園」「甲風園」などの地名には、共通して「甲」の字が用いられています。これは単なる偶然ではなく、いくつかの意図が背景にあります。

1. 干支に由来する「縁起の良さ」
「甲子」という言葉に代表されるように、「甲」は干支の最初であり、始まりや縁起の良さを象徴します。新しい街や施設をつくる際、その「始まりの力」にあやかろうという意図があったと考えられます。

2. 音の美しさと記憶への定着性
「こうようえん」「こうふうえん」といった音の響きは、美しく優雅で、印象に残りやすい名前です。当時の住宅地開発では、地名の響きやブランド価値も非常に重視されました。

3. 阪急電鉄の戦略的ブランディング
阪急電鉄(創業者:小林一三)は、鉄道開発と住宅開発、さらには商業施設の運営をセットにした「郊外生活圏」のモデルを築いた先駆者です。地名の統一感やブランド力を持たせることで、地域全体の価値を高める戦略がとられていました。

まとめ


西宮の「甲」地名が映し出す時代の理想
「甲子園」「甲陽園」「甲風園」など、西宮市における「甲」のつく地名は、ただの名称ではありません。それぞれの地名が誕生した背景には、時代の流れや鉄道会社の戦略、そして人々の暮らしへの理想が込められています。

今では日常的に使われるこれらの地名も、実は「始まり」「吉祥」「風雅」など、多くの意味を持った名前だったのです。

西宮を訪れた際には、ぜひこれらの地名に込められた物語にも思いを馳せてみてください。きっと、街の風景が少し違って見えてくるはずです。













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